循研の活動

循研ピアレビューの実際

循研では平成21年から毎年システマティックなピアレビューを始めました。限られた時間の中で科研費申請書の質を高め、問題発見・解決力を身につけるために7つの原則を決めています。

若手メンバーのみによる実施

循研ピアレビューは研究開始後1年〜5年程度の若手メンバーのみで実施します。研究室チーフなど、いわゆる指導者は参加しません。指導する/される立場が問題発見・解決力発揮の妨げになることを避けるためです。実際にやってみると、若手メンバーの潜在力は素晴らしく、ピアレビューでその力が充分発揮されることがわかりました。

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価値観の共有

参加者が同じ視点で科研費申請書を評価するために、循研ピアレビューでは4つの観点を決めています。重要性、独創性、リアリティ、読みやすさの4つです。多くの人がとても大事なことだと思い(重要性)、申請者以外に解決策を持っている人がいなくて(独創性)、その解決策が申請者の能力や環境から考えて実現可能であることが(リアリティ)、評価者に伝わるなら(読みやすさ)、その科研費申請書は採択されるはずだと循研では考えているからです。実際の科研費審査も同様の観点で評価されています。

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オープンディスカッション

実際の科研費審査は主に書面審査ですが、循研では皆が集まって科研費申請書の強化方針を話し合います。循研メンバーはとても忙しく、スケジュールを合わせるためには皆の努力が必要です。それにも関わらず貴重な時間を使うのは、顔を合わせてお互いの考えを伝えあうことが、皆で論理的に考え1つの目標に向かって力を合わせる最高の方法だと循研では考えているからです。ディスカッションの人数は3人〜7人程度が良いようです。

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考えを形にする

循研では、論理的思考の第一歩は文字にすることだと考えています。話し言葉は口にした瞬間に消えてしまい、論理の部品として組み合わせることができません。言ったことを覚えておくだけで頭を使ってしまい、余力が無くなってしまいます。ただ書くだけではなく、きちんとしたフルセンテンスにします。図は情報量が多すぎて(いろいろな解釈ができて)、皆で論理を共有するのに向かないので、あまり使いません。 循研では考える時に言葉をとても大切にします。フルセンテンスにした後は、足りない言葉がないか、無駄な言葉がないか、曖昧な言葉がないか、同じ意味なのに別の言葉を使っていないか、などに神経を使い、自分たちが考えていることを明確にしていきます。自分が考えていることは、言葉(文字)にするまでは自分自身でも分からないと循研では考えています。

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論理立ての筋道

循研ピアレビューは1回あたり2〜3時間、3回が1セットで、毎年7月に開催します。3回に分けるのは論理を組み立てるステップに沿っているためです。第1回と第2回は3人〜7人のチームで、第3回は全員で話し合います。

第1回は「問題点はどこに?」をテーマに申請書の中でもっと良くできる点、つまり問題点を探ります。この時点では問題点を書き出すことに集中し、解決はしません。問題点の位置づけや解決の必要性は、研究計画の方針次第だからです。出そろった問題点を類似したグループに整理したら第1回は終わりです。

第2回は「売りを探せ!」をテーマに申請書の強みを探ります。強みを書き出すことに集中し、申請書の改善はしません。強みが出そろったら、最も強い点(売り)を決めて第2回は終わりです。

第3回は「突破口はどこだ!」をテーマに、申請書の「売り」1つと複数の問題点を各チームから報告し、全員で申請書の「売り」を決めます。そして各問題点がどのように「売り」を邪魔しているかを総合的に検討し、「売り」を強化する方針を決定してピアレビューを終了します。

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課題提供者の仕事

循研メンバーはピアレビューに大きなエネルギーを注ぎます。中でも負担が大きいのは課題提供者です。不採択だった自分の申請書を紹介し、意見を聞くのはそれなりにストレスです。それでも、普段から研究生活を共にして信頼関係を築いている仲間が、自分の申請書のために一生懸命考えてくれた意見であれば受入れることができます。

循研ピアレビューでは、課題提供者の仕事は課題(申請書)の紹介のみと決めてあります。不採択だった反省を述べる必要はなく申請書に書いていないことを説明する義務もありません。課題紹介の後は、課題提供者も他のメンバーと同列の評価者となります。

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ホワイトボードを使う


循研ピアレビューでは上に書いた原則を実現するために、必ずホワイトボードを使います。ホワイトボードの使い方がピアレビュー成功のカギと言っても過言ではありません。

循研ピアレビューの4つの観点(重要性、独創性、リアリティ、読みやすさ)をホワイトボードの四隅に書きます。改善できる点、良い点を書き出す時は、どの観点に基づくかを考えて、その観点の近くに書きます(価値観の共有)。

良い意見がたくさん出ても、記録しなければ言葉は消えてしまいますし、何を話しているか分からなくなることもあります。人数が多いと隅っこで本筋とは別の議論が始まり、収拾がつかなくなることもあります。こんなことが起こらないように、ホワイトボードに論点を書き出し(オープンディスカッションで考えを形に)、全員がホワイトボードに書いたことに集中して何が話題かを常に意識します(論理立ての筋道)。課題提供者以外の人が進行とホワイトボード記録を担当します(課題提供者に責任はない)。

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