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発見と発明のフレームワーク(2018年10月8日)
前回の雑感では研究の動機を「根本原理の追求」と「用途の考慮」で考えるストークスの分類を紹介しました。研究成果として、前者は「発見」、後者は「発明」を目指すものと考えられます。医学研究は生命現象や病気の仕組みを解き明かすと同時に診断や治療への応用を意識しています。したがって医学研究は概ねパスツール象限に位置付けられます。
以前の記事に示した「理解の構造」は「発見」を記述する論理構造です。今回は「発明」まで考えに入れて「理解の構造」を発展させてみましょう(図)。
さて、発明とはなんでしょうか?
特許法では発明は「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されています。有体物であれ無体物であれ、発明は単なる頭の中の考えではなく具体的に存在するので、ここでは「理解の構造」のうち一番下の「データ・事実」レベルに置きましょう。
発明を構成するものは自然法則を利用した「要素技術・方法」の組み合わせです。これを下から二番目の「方法・解釈レベル」に置きましょう。
発明を実施した効果で課題の解決が得られれば発明は完成ですが、そう簡単にはいきません。生命現象や病気の理解が不十分なことが多いためです。
課題が解決されない場合は、発明を実施した効果を検討して課題が解決できない理由を明らかにし、新たな自然法則を発見する必要があります。
発見に基づいて要素技術・方法を組み合わせ、発明を実施して課題が解決できるかを検討します。これを繰り返して課題が解決され、社会に望ましい変化を起こすことができれば発明は完成です。
以上の考察から、多くの医学研究では発見と発明の同時追求が必要であり、パスツール象限に位置することが分かります。発明と発見の重みづけはプロジェクトの目的により異なるでしょう。
発見と発明を組み込んだフレームワークを図に示します。研究計画書や論文を作成する際に使ってみてください。参考に、発明を記述する代表的な文書である特許明細書の記載事項を示します。研究計画書や論文と対応づけてみると面白いでしょう。