久留米大学循環器病研究所の雑感

雑感

この「雑感」のページには、研究活動で感じたことや、循研方針の背後にある考えを不定期に掲載します。記事内容は循環器病研究所の公式見解でなく、職務に基づく私個人の考えとお受け取りください。

久留米大学 循環器病研究所 青木浩樹

問題解決フレームワークと自転車(2017.8.31)

複雑な問題は一人では解決できず、何人かで相談することはよくあると思います。何人かで考えることは様々な視点を得る良い手段です。しかし、メンバーの視点が様々であるため焦点がボケたり方向を見失うことがありますし、メンバー同士の誤解のためかえって解決から遠ざかってしまうこともあります。だからと言って他のメンバーと違う意見を控えてしまっては、みんなで考える意味がありません。

そんな時には、考えに一定の型(フレームワーク)を与えることが有効です。フレームワークは「考え」を入れ物(フレームワーク)と中身に分け、入れ物は統一して混乱を避けつつ中身の多様性を確保する方法です。

フレームワークは文字通り「考え方の型」であり、考え方を揃えることで中身に集中するためのものです。考えの抜けを防ぐためのチェックリストでもあります。また、「今ここを話してるよね」「今からここの検討だよね」と確認するためのコミュニケーション・ツールとして使うこともできます。

試しにネットで「問題解決フレームワーク」を検索してみるとたくさんの種類が出てきます。これは、やりたいことや問題の性質により適切な考え方が違うからです。

例えて言うならフレームワークは自転車のようなものです。自転車を使うと歩くより速く、より遠くまで行けますし、荷物を運ぶこともできます。しかし自転車だけで力を発揮することはできません。目的に合わない自転車は不便ですし、場合によってはお荷物になることもあります。乗り手の技量も重要です。

自転車と同様にフレームワークの使いこなしにも練習が必要です。そのためには、集中して何回も繰り返すことが大切です。皆さんも自転車の練習で転んだり擦りむいたりしたかも知れません。しかし練習すれば自転車に乗れるようになります。

自転車に乗れたらそこで終わりではありません。自転車に乗ることが自然になってきたらもっと遠くに行きたくなり、乗るのがさらに上手になります。

フレームワークも一旦使えるようになると、皆さんの考え方の一部になり、なぜ使えなかったのかも分からなくなるぐらいになります。そして研究以外の問題でも自然にフレームワークを使うようになり、ますます上手に使えるようになります。

研究とは考え方の集中的な練習です。研究を経験するということは、この一生使い成長し続ける力を手にすることだと私は思います。

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