久留米大学循環器病研究所の雑感

雑感

この「雑感」のページには、研究活動で感じたことや、循研方針の背後にある考えを不定期に掲載します。記事内容は循環器病研究所の公式見解でなく、職務に基づく私個人の考えとお受け取りください。

久留米大学 循環器病研究所 青木浩樹

思考フレームワーク「理解の構造」と研究の価値(2020.9.10)

皆さんは、「物事をどう理解しているか」を説明できるでしょうか?循研ピアレビュー2020循研HP#2_1+2

例えばホワイトボードを例に考えてみましょう。皆さんの多くはホワイトボードを使い理解していると思います。それでは、ホワイトボードを「どう理解しているか」を説明してみてください。どんな時に何のためにどうやって使うかを説明することは比較的簡単です。しかし、「ホワイトボードそのものが何であるか」を説明するのは意外と難しいのではないでしょうか。。我々はそういう説明をするトレーニングを受けていないのです。説明の一例を図に示します。クリック(タップ)して図全体をご覧ください。


研究申請書とは「理解できないものを理解できるようにする」ための計画書であり、論文とは「理解できなかったものが理解できた」ことを説明するものです。研究申請書や論文を書くのが難しいのは、内容は別にして「物事をどう理解しているか」を説明するのが難しいためだと思います。


循研では「物事をどう理解しているか」を説明する思考フレームワークとして「理解の構造」を作りました。このフレームワークでは、人間の認識や理解に関わらず存在する世界を示す「事実の平面」と、人間が理解した世界を示す「理解の平面」を考え、その2つの平面をつなぐことが理解であると定義します。そして、「事実の平面」にある物事の属性を認識し、属性を関連づけてひとまとまりにし、それを「理解の平面」に組み込むことで「事実の平面」と「理解の平面」をつなぐことができる(理解できる)と定義しました。

この思考フレームワークでは、発見によりどれだけ「理解の平面」が変化したかが研究の価値です。


循研では「理解の構造」を科研費申請から論文完成まで、研究活動のあらゆる場面で使うことで、論理思考のトレーニングをしています。このような経験から得られる論理的で柔軟な思考力は、研究、臨床を問わずプロフェッショナル・キャリアで重要な力になることと思います。

    アーカイブを見る