循研での研究

論文の投稿と出版

学術雑誌とピアレビュー

論文が完成したら学術雑誌に投稿します。循環器、医学、生物学、科学一般に関する雑誌はとても沢山あり、その中から自分の研究課題に適した雑誌を選びます。そして、論文を雑誌の規定に合わせたスタイルにします。スタイルを合わせるために、実際には論文を書き始める前に投稿する雑誌を決めることがよくあります。

我々が投稿する雑誌(学術雑誌)は、編集部とは独立した評価者(査読者:reviewerまたはreferee)が論文の質を評価し、その評価に基づいて編集部が論文掲載の可否を決める方式をとっています。査読者は現役の研究者で、もしかすると自分の知り合いかもしれませんが、利害関係を避けるため匿名です。このような方式の雑誌をピアレビュー・ジャーナルと言います(ピア peer = 同僚、同業者)。雑誌にもよりますが、1人から4人の査読者が論文を評価します。雑誌によっては編集部が掲載可能性があると判断した論文のみをピアレビューに回すこともあります。

▲上に戻る

投稿から採択まで

投稿してから数日〜1ヶ月程度で編集部から、査読者のレポートとともに返事が来ます。返事は、採択(アクセプト:accept)、修正・再投稿(リビジョン:revision)、不採択(リジェクト:reject)に分かれます。無条件の採択はめったにありません。修正・再投稿の中には、文章の書き直しのみの場合と追加実験を要求される場合の2つがあります。文章の書き直しのみであれば事実上の採択ですが、ほとんどの場合は追加実験を要求されます。追加実験を要求された場合も、きちんと実験して査読者の疑問に答えれば、採択される可能性はかなり高くなります。ただ、研究手法が進歩したため、より高度な追加実験を求められるようになった一方で、再投稿までの期間が限られることも多く、追加実験するか、その雑誌をやめて別の雑誌に投稿するか、ギリギリの選択を迫られることもあります。リビジョンは大抵1回か2回ですが、時にはもっと多くの修正を求められることもあります。

▲上に戻る

学術論文の意義

論文の執筆、投稿から採択に至るまでには、研究の実施とは別の苦労があります。一流の研究者(reviewer)の意見を取り入れることで論文の質が上がることを実感することもできます。論文の査読は単なる採択判定ではなく、書面を通じて著者と査読者がやりとりすることで、論文の質、つまりサイエンスの質を高める作業です。そのため、査読者には論文の質と問題点について具体的なレポートを提出する義務があり、A4で1枚程度、多い場合には数ページに渡るレポートを編集部に提出します。リビジョンになった場合、論文著者は査読者に答えるために、修正した論文とは別に修正点を説明した手紙(rebuttal letter)を添えます。この手紙は、言わば査読者に向けて書く小論文で、本論文と同様に論理的に書く必要があります。このような厳しい査読の過程を経て出版されて、初めて論文は完成したと言えます。

完成した論文は研究生活の集大成であり、何年もの間ただ1つの課題に取り組み続けて医学上の謎を解き明かした証明書です。論文は、人類の共有財産として医学・科学を前進させるものであり、研究した人が総合的な問題発見・解決力を持っていることの証明です。それを大学が認めたものが学位(博士号)です。論文や学位はいわゆる資格ではありませんが、様々な困難に直面した時に、問題を明らかにし、解決し、その困難を乗り越える力を与えてくれます。

▲上に戻る